展示品>館長室たより 2018年

小さな文学館の大きな喜びⅤ(近況報告)

 10月の福井県ふるさと文学館での全文協の部会で、興味深い議論が展開されました。事例報告の一つで、開催期間中に展示内容を変化させているという報告がありました。その館では、そういうことが普通になっていて、開催当初と最終日ではかなり展示が違っていることもあるようでした。来館者には不公平なのですが、「増殖・進化する展示」という意味では面白いと思いました。そこでこういう質問をしました。「企画展示の変貌は、それ以前の来館者にどう知らされるのか」。初日に来た人に対して不公平だと思って訊きました。答えは「個人のツイッターで知らせるだけで、取り立てて告知していない」とのことでした。
 この遣り取りに、山崎一頴会長から、全く別の観点の意見が出されました。「企画展は、職員が何カ月もの時間をかけて準備した成果である。それをそんなに簡単に変えてよいのか」。文学館の増殖と進化は否定されませんでしたが、それはもっと長い時間の中で思考すべきことと考えておられるようでした。それだけに、一つの企画展開催には十分な準備をしなければならないと改めて思いました。
 部会の後、この文学館の施設見学をして、企画展も案内してもらいました。福井は、「解体新書」を著わした杉田玄白の出身地とかで、氏の展示コーナーもありました。この夏に訪れた時には、「医と文学」という杉田玄白を中心とした企画展を開催していましたが、この時には常設展示の一部として縮小されていました。
 その玄白のコーナーに見事な揮毫の軸が掛けられていました。達筆過ぎて直ぐには読めませんでしたが、玄白の筆になるものとのこと。「医事不如自然」と書いてあり、「医事は自然に如(し)かず」と読むそうです。今流に言えば、如何なる医療も自然の治癒力には及ばない、という意味になります。ちょっとのくしゃみや鼻水で、直ぐに薬に手を出す身であるので、余計に心に染みる言葉でした。
 11月は、金沢のTV局から取材を受けました。三島由紀夫の「美しい星」の吉田大八監督による映画化で、石川県もロケの舞台として扱われています。そこで、三島の命日(11月25日)に因んで、「三島文学の舞台を歩く」という番組を作りたいとのことでした。ポイントは、三島にゆかりのない富山でどうして文学館を開設したか、また私の三島に対する思いを聞きたいということで、1時間半の取材でした。放映された番組は丁寧に編集されており、その日のHPのアクセスは意外に多かったので、来春にはまた石川県からのお客さんが多いかもしれません。
 来春は、三島が最も愛した短篇の一つ「橋づくし」がテーマの企画展です。小さな企画ですが、分かり易くて納得してもらえる展示にしたいと思います。



(2017年12月)
(隠し文学館 花ざかりの森 館長)

全国文学館協議会会報 第70号(2018年1月31日発行) 寄稿