展示品>館長室たより 2009年


「定期開館」ということ

 当館は2008年3月に開館した。昨年の開館記念展、今年の一周年記念展ともに3月1日から3月20日過ぎの春分の日か日曜日まで午前10時から午後5時まで開館した。その後は閉館としている。個人開設のため、経費的な面もあり限られた期間での開館としている。最初のうちは、「どうして年間を通じて開館しないのか」という質問も受けたが、私設の文学館であるということで、大方はすぐに理解して頂けるようになった。
 しかし、昨年からすでに、定期開館が終了した翌日には、当館のホームページに次のようなコメントを載せている。「記念展が終了しますと、一旦閉館します。次回の開館は来年の3月の予定です。ただし、今年11月までの期間はご予約・ご調整を頂ければ、ご来館頂くことが出来ます」。そのあとに、館長宅の電話とFAXの番号を表示している。リーフレットにも同様の記載をしている。
 そこで、昨年、今年とも定期開館が過ぎてからも、県内、外から大型、小型のバスを何台か迎えた。今年は昨年に比べて個人の来館予約が多い。日本近代文学館でポスターを見てから、あるいは当館のホームページを見てからずっと気になっていたと遠く、東京、千葉から飛行機、レンタカーを乗り継いで来られた方もあった。
 館長から一応の解説をさせて頂いてから、自由にご覧頂いている。そういう皆さんは丁寧に展示の解説文などをお読みになり、館長との対象作家についてのやり取りも楽しみ、つい時間を忘れて話し込まれる。定期開館中もそうだったが、初年に比べて2年目のほうが1人当たりの滞在時間が長くなったようだ。新聞資料研究会が富山で大会を開き、その翌日に団体でお越し頂くなど、今年は予約が途切れない状態が続いている。
 この「定期開館」だが、最初のうちは単に経費を節約しているようで、何となく引け目を感じていた。定期開館の期間中は受付と監視の方をお願いしている。また、土日には駐車場整理員も配置している。加えて、電気水道代がかかる。そういう状態で公立の文学館のように通年開館にすると、遠からず破綻してしまう。来館される立場からすると予約をするというのは確かに面倒だが、誰もそのことをおっしゃらず、却って静かな文学館を堪能していかれるように感じるのは、あながち手前味噌ではないように思っている。
 このように、消極的な「定期開館」という考え方から、前向きな「定期開館」という考えを持てるようになったのは、全国文学館協議会の総会の後の懇親会で、日本近代文学館の方からお話を頂いてからだと思う。
 「個人での文学館開設というあり方が、もしかすると一番文学館らしいあり方ではないか。したがって、定期開館という運営の仕方も当然あってよい」。こういう風におっしゃって頂いたように思う。
 これからも、密度の濃い来館者の期待に応えられるよう、展示を工夫して行きたい。


(隠し文学館 花ざかりの森 館長)


全国文学館協議会会報 第44号(2009年10月20日発行) 寄稿